生徒実態調査①ー マラウイと日本の生徒像の違い

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先日提出した活動報告書にも書きましたが、5月の中ごろに『生徒実態調査』と題したアンケートを行いました。対象は私の受け持つForm3(日本の高校2年生に相当)の物理化学受講者全員で、78人から有効な回答を得ました。

(答えにくいものはとばしてもよいと説明したので、全ての回答が78人から回答を得たわけではない)

その結果からいくつかの項目を抜粋して紹介してみたいと思います。

こうしてまとめてみるとマラウイの生徒像が見えてくるような気がしますし、日本の生徒との違いも垣間見ることができたように思います。

質問事項

 

アンケートでは以下のような内容についての質問を生徒に投げかけてみました。

 ・年齢

 ・家族の人数

 ・家から学校までの距離

 ・好きなスポーツ

 ・好きな食べ物

 ・好きな科目

 ・嫌いな科目

 ・授業の改善点

 ・卒業後の目標 or 将来の夢

 ・幸せ、不幸せに感じる時

他にも質問はあったのですが、今回はこれらの質問への回答についてまとめたものを掲載したいと思います。

年齢と家庭環境

・年齢

最初の質問として年齢を聞いてみたところ、担当学年の生徒の平均年齢は16.9歳でした。

学齢的には留年等がなければ16歳か17歳であるはずですので、かなり妥当な数字に思えます。

しかしよく見てみると日本との違いに気付くこともできます。

例えば最少年齢と最高年齢です。

下は14歳から上は20歳まで、1つの学年の中に様々な年齢の生徒がいることが分かりました。

さらに男女別に平均年齢を出してみると別のことも見えてきます。

男子の方が女子よりも平均年齢が1.4歳ほど高いのです。

これらの結果について、同僚教員に尋ねるなどして情報を集めてみたところ、2つほどそれらしい理由が見えてきました。

➀そもそもマラウイはマネジメントが行き届いてなく入学時期がバラバラである。学校の人数が極端に多いと6歳になっても小学校に入学できなかったり、早く入学させた方が有利だと思う親が3歳くらいから小学校に通わせたりする。

特にマラウイでは『高校生の年頃=女の子にとって結婚適齢期』のように思われているので、親はなおさら女の子を早めに卒業させたがる傾向があるようである。

②配属先の学校に女子寮のあるため、優秀な女子生徒が集まりやすい。そのため女子生徒の方が平均的に好成績であり、留年率も低い。

これらが影響してか女子の方が、若干ですが平均年齢が若くなっているのだと思われます。

(それでも精神年齢は女子の方が上に感じる)

・家族の人数

家族の人数の平均は6.5だったので各家庭6~7人家族であることがこの学年の平均となります。もちろん日本よりも多く、私の視点からすればマラウイは子沢山の家庭がほとんどという印象を受けました。

生徒の年齢、家族の人数を見る限りでは、マラウイの生徒のバックグラウンドは日本よりもはるかに多様です。

14歳の高校2年生がいたかと思えば20歳の同級生が隣で一緒に勉強していたり、一人っ子の家庭に育った子もいれば15人家族の一員である子もいたりします。

担当学年のざっくりとした傾向をつかむと同時に、多様な背景を持つ各々への生徒理解も深めていく必要があるのだと改めて思いました。

・家から学校までの距離

家から学校までの平均距離は3.3キロでした。

ほとんどの生徒は自転車を所持しておらず、この距離を歩いて登校するのでそれなりに時間がかかっています。

しかしながら最近は学校の数も増えてきて、わざわざ遠くの学校へ通わなくてもよい環境が整いつつあるように思います。半分以上は寮生でもあるので、何時間もかけて学校へ毎日通う子はかなり少ないように思われます。

好きな食べ物&スポーツ

なんとなくわかっていたのですが一応好きな食べ物とスポーツを聞いてみました。

その結果、好きな食べ物はマラウイの主食であるシマもしくは米であり、スポーツはサッカーとネットボール(ドリブルのないバスケのようなスポーツ)となりました。

・好きな食べ物

マラウイ人は本当にシマが大好きです。

日本人が米を好むことよりはるかに好きなのではと感じております。また「好きな食べ物は?」と聞かれて自分たちの主食を答えるあたりにも日本との違いを感じます。

今思えば日本は本当に食文化の豊かな国です。

四季折々の食材が手に入り、多国籍の料理を日常的に口にする、マラウイの地方では考えられないことです。配属先の学校の寮生は1日3食の食事が提供されるのですが、シマと豆のスープ×3 といったこともよくあることです。

・好きなスポーツ

スポーツは体1つと簡単な設備で多人数がプレイできる、サッカーとネットボールに人気が集中しました。だいたい男の子はサッカー、女の子はネットボールをしているイメージがあります。

好きな科目&嫌いな科目(最大3つずつ)

好きな科目、嫌いな科目を3つまで書いてくださいという項目では以下のような結果が得られました。

・好きな科目(カッコ内に78人中何人が選んだかを表示)

 1位 物理化学  (65/78)

 2位 生物      (43/78)

 3位 英語        (42/78)

 4位 数学        (41/78)

 5位 農業        (15/78)

・嫌いな科目

 1位   歴史      (38/78)

 2位 ライフスキル  (32/78)

 3位 社会      (28/78)

 4位 地理      (27/78)

 5位 農業      (21/78)

好きな科目1位が私の担当する物理化学(日本で言う化学と物理を、マラウイの現行カリキュラムでは1教科として習う)が2位に大きな差をつけて選ばれたわけですが、これは明らかにアンケート記入中の私の目を気にしてこう書いたのだと思います。

マラウイでは生徒にせよ一般人にせよ、アンケートに答えるという経験は日常において皆無と言っても過言ではありません。

そもそも生徒は『アンケート(Questionnaire)』という言葉を知りませんでした。

また名前は書かないと説明したにもかかわらず「Is this an exam?(これは試験なの?)」とまで聞かれたので、何度も「試験じゃないから正直に書いて」とアナウンスする必要がありました。

そんな状況だったのでこの結果は正直には喜べません。私の担当する物理化学以外の教科への意識は正しいものとして受け止めたいと思います。

ここで気づくことは、試験における苦手科目と教科への好き嫌いはそこまで関連がないということです。

・去年の国家試験における教科別の不合格率ワースト5(配属校のデータ)

  ワースト1位 数学   52.1%

  ワースト2位 物理化学 42.0%

  ワースト3位 生物   38.3%

  ワースト4位 聖書学  36.7%

  ワースト5位 農業   21.1%

(マラウイの国家試験は日本のセンター試験のように科目を選ぶことができる。ここでは全体の10%以下しか受けていない教科を省いてカウントしている。)

去年の国家試験の結果と比べてみたいと思います。

色を付けて示したものが好きな科目として選ばれた科目で、数学に至っては半数以上が欠点を取っていますが「好き」ではあるようです。

もはや好きな教科ほど得点が取れていないという関係性すら見えてきました。

ひょっとすると私が物理化学を担当していることもあり、生徒が「理系科目を選んだほうがいいのではないか」と判断したのかもしれません。

いずれにせよマラウイの理数系科目への理解度は低いです。今後の理数科隊員の更なる活躍が望まれます。

授業の難易度&授業の改善点

・授業の難易度

授業の難易度について『簡単・普通・難しい』の3つの選択肢の中から選んでもらったところ

以下のような結果が得られました。

簡単、普通と答えた生徒が同数で、共に44%という数となりました。

残りの12%が難しいと答えたのですが、感覚としてはもっと“難しい”の割合が高くなっていてもいいのでと感じております。単元によっても難易度は変わってくるものだと思いますが、ひとまず現段階では授業の難易度は変化させずに望みたいと思います。

・授業の改善点

今回のアンケートの主な目的は、授業の改善点・要望について生徒の声を聞くためだったと言ってもいいほどです。

赴任から三か月が経ち、ある程度授業を実施することに対しては慣れてきたように思います。そこで更なる授業の質の向上を図るため、私の授業に対するフィードバックを仰ぎました。

そこでの最も多かったのが「宿題を与えること」でした。

これまで宿題は出さずに、授業の中だけで復習も行えるようにしていたのですが、逆に宿題が欲しいという声が多数みられました。

どれだけの生徒がちゃんと宿題をやってくるかはわかりませんが、定期的に宿題を与えていくということを理科主任との話し合いの結果決めました。

2番目に多かったのは「ミニテスト(もしくは週末テスト)を実施するべきである」という意見でした。これも先程の意見と被る部分があり、生徒は今よりも演習問題を解くことを望んでいるのではないか、という見解が得られました

生徒の負担を減らすためにも宿題や試験の回数は多くなり過ぎないようにしようと決めていたのですが、物は試しということで成績評価には入れないミニテストを定期的に実施し、理解度をチェックしていこうと思います。

こうやってアンケート結果を見ていると勉強へのモチベーションは高いのではと感じるのですが、成績を見る限りではそれが数値には表れてはいません。なんとか私の担当科目だけでも不合格率を改善することができればと、より強く思うようになりました。

将来の夢 or 卒業後の目標

卒業後どうしたいのか、何になりたいのかも聞いてみました。

そのトップ3を紹介したいと思います。

  1位 医者

  2位 看護師

  3位 銀行員

1, 2位はともに医療現場からの職業となりました。

マラウイでは未だにマラリア、下痢等の、先進国であれば予防・治療により回復が可能な病気で多くの命が奪われています。その現実は生徒たちも理解しており、追加のコメントとして「病気に苦しむ人を助けたいから」と理由を添えた回答も多く見られました。

3位の銀行員はマラウイの産業を表しているように思いました。

マラウイの産業は全くと言っていいほど未開発です

8~9割の国民が農業従事者であるマラウイでは国内企業の数もごくわずかであり、そこで目立つのが国内・外資系を含めた「銀行」という働き口です。

日本の子どもたちの中で「将来は銀行員になる」と口にするのはいったいどのくらいの割合なのでしょうか。他に産業が発達した日本ではあまり思い浮かばない答えであるように感じましたが、マラウイの地方では『銀行員=バリバリのビジネスマン』のように見えるのも確かです。

ただこの答えは“他の仕事が存在していないから”という現状を表しているようにも思えました。

幸せ&不幸せに感じるとき

最後に「幸せと感じる時」「不幸せと感じる時」について伺った質問のトップ3の回答を紹介します。

・幸せと感じる時

  1位 テストの点数が良かったとき

  2位 親(もしくは家族)と一緒にいるとき

  3位 友だちといるとき

テストの点数が良かったら幸せと感じるという、なんとも生徒らしい回答が最も多く見られました。学年的にもそろそろ国家試験のことを考え始める時期でもあり、成績のことは多くの生徒が気になることなのかもしれません。

2位の“親もしくは家族と一緒にいるとき”というのも面白いなと感じました。

マラウイ(と言うより多くの途上国)では家族の結びつきが日本以上強く、それぞれが助け合って生きていくといった印象を受けます。また半数以上が寮に暮らすこの学校においては親との時間はかけがえのないものなのかもしれません。

日本だと年頃的には反抗期真っ盛りであろうこの時期に、このような答えはあまり返ってこないような気がしました。

3位の“友だちといるとき”というのは、日本もマラウイも大差のない答えかもしれません。

やはり友だちと共に過ごす時間は世界共通なのでしょう

・不幸せと感じる時

  1位 テストの点数が悪かったとき

  2位 葬式に参加しているとき

  3位 病気にかかったとき

幸せを感じるときと反対で、1位は“テストの点数が悪かったとき”が不幸せに思う瞬間ワースト1位となりました。

留年の多いマラウイの中等教育において、テストの成績が悪いということは生徒にとって一大事です。勉強に対する努力をその分多くしているかどうかは別として、成績評価に対して日本以上にシリアスであるように思いました。

2,3位の結果はマラウイの現状を表しているように思います。

マラウイで暮らしていて思うことは、本当に死が身近にあるということです。

先日マラウイ人の知人の家にお邪魔させてもらったのですが、その知人の家までの10キロの移動の間に3回葬式を見かけました。

(マラウイでは親族だけでなく多くの知り合いが葬式に立ち会うため人だかりができる。また葬式の周りで騒がないよう、道に葬式が行われていることを示す目印が置かれる。そのため遠くから見ても葬式が行われていると判別することができる。)

アンケートでこのようなことを聞いてしまい申し訳なくも思ったのですが、親、兄弟、付き合っていた恋人の葬式に参加したときが辛かったという回答も見られました。

多くの場合は病気でなくなるパターンがほとんどで、マラウイの医療体制の脆弱さも垣間見ることができます。教育セクターだけでなく医療分野においても、まだまだマラウイには課題は山積みであると改めて感じさせられました。

アンケートを実施して

いかがだったでしょうか。

日本とマラウイは、端的に言ってしまえば生活環境が全く異なり、子どもたちの考え方にも違いが見られて当たり前だと思います。

そして今私のいる教育現場は自分が育った環境ではないため、生徒のことを本当に理解していくにはまだまだ時間がかかるものだと思われます。

今回のアンケートで様々なことが見えてきたとは思いますが、これで彼らのことを分かった気にならず、本調査が更なる生徒理解に繋がっていけばいいなと思っております。

この記事のまとめ!

アンケートの結果を受け…

・年齢や家庭環境は日本以上に多様な生徒が同学年内にいることが判明

  →学年全体の傾向をつかむ努力だけでなく、個々への理解に努めることも必要である

・授業の難易度は変えないものの、生徒へのタスクを増やす方針に定まる

  →やってこないかもしれないが宿題を与え、定期的にミニテストを実施する

・生徒の意見が国の状態を表しているようにも思えた

  →産業、医療分野などの現状がアンケートの回答となって表れたようにも思われた

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