【協力隊員必読】国際開発・協力、途上国の理解に効く推薦図書10選

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私は現在大学院にて国際開発学を専攻しつつ、休学を利用して青年海外協力隊に参加しております。去年までは大学院に在籍し、開発学の変遷や理論・手法、そして専門とする教育開発の枠組みの理解に多くの時間を費やしてきました。

そしてそれらに関する知識の習得のために読書は欠かすことのできないものでした。

今回の記事では筆者がこれまでに出会ってきた図書の中で、国際開発や国際協力のこと、もしくは発展途上国のことを理解するためにたいへん参考になった10冊を推薦図書として紹介したいと思います。

紹介する書籍はどれも有名なものばかりで、もしかすると既に皆さんが読んでいるものも多いかと思われます。それほど有名な名著を取り揃えたつもりです。

また今回の10冊は全て邦訳のあるものを選んでいます。もし読んだことがなく、この記事を見て興味を持った本があったなら是非読んでみてください。

 

【国際開発学専攻の筆者が選ぶ推薦書10選】

  国際開発・国際協力の理解に効く4冊

  途上国理解に効く2冊

  教育開発の理解に効く2冊

  その他個人的にお勧めする2冊

国際開発・国際協力の理解に効く4冊

  

➀『Development as Freedom』

(邦題:自由と経済開発)

著:アマルティア・セン

現ハーバード大学の教授である開発経済学の権威、アマルティア・センのもっとも有名な1冊です。おそらく開発学を学ぶもので彼を知らない人はいないでしょう。私は開発学の世界に初めて興味を持った学部時代、教育開発の分野の本ばかりを読んでいました。

その際センの言う「ケイパビリティ・アプローチ」や「人間の安全保障」というワードを知った時、私は彼が経済学者だとは思っていませんでした。

そのせいもあって、今でも私の中のアマルティア・センは『経済学者らしくない経済学者』というイメージを持っています。

センは開発というものを、人々が人間としての自由を獲得していくことと捉え、これまでのGDPを主とした開発論に一石を投じました。述べられている内容は開発学や途上国に関連があるだけでなく、現在の経済至上主義ともとれる日本に通ずるものもあるのではないかと思います。

またこの記事を書くとなって初めて「Development as Freedom」の邦題が「自由と経済開発」というタイトルであることを知りました。(本書の論旨を考えると邦題は「自由としての開発」だと思っていた。)

邦訳のレヴューを見たところ、どうやら日本語への訳し方に関して評判があまり良くないようなので英語版で読んでみるといいかもしれません。

確かセンは専門用語を使わず、より多くの人に理解してもらえるようこの本を記したはずなので、読破することもそう難しくはないと思います。

英語の勉強と思ってオリジナル版を読んでみてはいかがでしょうか。

  

②『The End of Poverty:How We Can Make it Happen in Our Lifetime』

(邦題:貧困の終焉 2025年までに世界を変える)

著:ジェフリー・サックス

こちらもかなり有名な1冊だと思います。

サックスは開発援助の増大に支持を示す学者の1人であり、この本の中でも開発援助がアフリカを中心とする多くの国で功績を上げてきたことを記しています。

そして今後も開発援助を十分に行うことを継続すれば2025年までに、世界から貧困を根絶することが可能であると主張しています。

これは途上国の開発に携わるものであればかなり明るいニュースなのですが、もちろんただ単に援助にお金をつぎ込めばよいと言っているわけではありません。

その援助は当該国の地理的条件、歴史的・社会的背景等を加味した臨床経済学の分析によるアプローチがあってしかるべきであり、かつ様々な分野の政策 (経済政策だけでなく教育、医療、福祉等) の包括的、理想的な組み合わせのもと実施されなくてはならないと主張しています。

そのためには開発学の分野において、地域に根差した調査研究の多大な努力が強いられることでしょうが、貧困の根絶が不可能ではないことを示したこの1冊は読むに値するものだと思われます。

  

③『Dead Aid』

(邦題:援助じゃアフリカは発展しない)

著:ダンビサ・モヨ

先程の『The End of Poverty』が開発援助を肯定したものであるならば、本書はその真逆のことを述べた1冊です。

著者のダンビサ・モヨはマラウイのお隣の国であるザンビア出身のエコノミストであり、アフリカでの先進国主導の開発オペレーションやそれに伴う汚職を身近に感じてきた人物であると言えます。

主張は一貫して、(少なくともこのままの形で)開発援助を続けてもアフリカの発展途上国の経済発展はありえない、というものであり、これまでの援助政策の失敗をデータによって示しています。

もしかすると開発援助否定派の書籍でこの本よりも有名なものは他にあるかもしれません。しかし最も直線的に開発援助を批判し、その負の一面を痛烈に紹介しているのはおそらくモヨであるように思います。

The End of Povertyと併せて読むと対極の意見があるということを楽しめるかもしれません。

また本書は中国の開発援助についても多くのページを割いて紹介しています。個人的には中国の開発オペレーションに関して手放しで肯定できないところはあるものの、ザンビアにおける中国の存在感の大きさを表した部分と言えるでしょう。

(中国はアフリカ諸国、特に鉱物資源が豊富な国に対する融資を惜しまないため、カッパーベルトの銅を有するザンビアに対しては、資源に乏しいマラウイよりも支援の度合いが大きいことが予想される。)

  

④『Whose Reality Counts?: Putting the First Last』

(邦題:参加型開発と国際協力-変わるのはわたしたち)

著:ロバート・チェンバース

国際開発の大きな潮流である参加型というコンセプトを、学術的な場で提唱し続けたのがロバート・チェンバースです。

これまでのThe End of PovertyやDead Aidの議論からわかるように、開発援助には当該国に「効く」援助とそうでないものがありました。その「効く」方法を模索することが国際開発学の大きなテーマであり、長きにわたり重視されていることが途上国側のオーナーシップという観点です。

参加型という考え方は、はっきりと言うと「口にするは易し、行うは難し」といった感も否めません。特にマラウイの現場に来てから強く思っています。

ただチェンバースのこれまでの開発学における貢献を見る限りでは、その影響は明らかに多大なものであり、その考え方を知るために本書は有用なものであると思われます。

途上国理解に効く2冊

  

⑤『途上国の人々との話し方 国際協力メタファシリテーションの手法』

著:和田 信明, 中田 豊一

NPO法人ムラのミライ(旧ソムニード)の和田氏・中田氏が、途上国のフィールドの最前線で使用するファシリテーションの手法を体系化し、まとめたのが本書です。途上国のことが理解できる本、というより途上国においての住民からの正しい情報の聞き出し方を知ることができるといった内容となっており、本書を読むことで途上国理解の基盤ができるのではないかと思っております。

メタファシリテーションとは本書でもそのメカニズムが紹介されているように、通常の議論の促進ではなく参加者自らの自発的な気付きをもたらすことに特化したものであり、参加型開発手法の1つの形であると言えます。

総ページ数は400ページを超えるものの、小説のような語り口でその手法を紹介しており、あっという間に時間が過ぎていく感覚になったことを今でも覚えています。

途上国におけるフィールドワーカー(特にコミュニティ開発員)の方には必ず読んでいただきたい1冊です。地域住民と話をし、情報を収集する者であるならば目からウロコが落ちるような何かを学ぶことができると思います。

  

⑥『Poor Economics: A Radical Rethinking of the Way to Fight Global Poverty』

(邦題:貧乏人の経済学:もういちど貧困問題を根っこから考える)

著: A・V・バナジー, E・デュフロ

タイトルに経済学とあるように、本書はMIT経済学部の2人の教授による共著です。本来ならば「国際開発・国際協力の理解に効く」のカテゴリに入れたくもなりますが、誰にでもわかるような説明によるライトな書き口から、途上国のリアルな一面を経済学的な知識抜きに知ることのできる1冊となっております。

本書の特徴は、ランダム化対照試行という社会実験により、マクロなデータからは見えてこなかった「貧乏人がなぜ貧乏であり続けるのか」という問いに、教育、医療、マイクロファイナンス等の様々な観点から分析を行っている点です。

この本とはマラウイに来て間もない頃に出会いましたが、現地の人々と共に生活をしてさらに強く本書の内容に共感を覚えております。(現在壁一枚挟んでマラウイ人と同じ家に住んでいる。)

日本を含む先進国の社会的背景を基準として貧困問題を考えても、途上国で本当に起こる現象を想像・理解することは難しく、現状を変えていく要素を見極めることはできません。

その社会に入り、実際に何が起こっているのかを辛抱強く捉える必要があるのだと思います。

“貧困を削減する魔法の銃弾はありません”(本文より)

という文言の示す通り、多様な文化・社会様式に合わせた開発援助を模索するために参考となる1冊と言えるでしょう。

教育開発の理解に効く2冊

教育開発(教育というセクターが、質的にも量的にもどのように発展するかを研究する分野)の理解に役立つ2冊を紹介します。教育分野に興味のある方は特に必読です。

  

⑦『Pedagogy of the Oppressed』

(邦題 : 被抑圧者の教育学)

著:パウロ・フレイレ

おそらく途上国における教育開発を専門とする人であれば必ずと言っていいほど知っている名著です。

フレイレはブラジルの農民への識字教育実践から「エンパワメント」という言葉を生みました。彼の教育者としての功績はあまりにも大きく、「問題提起型学習」をいうという考え方は今の日本の文部科学省の好きな「生きる力」にも影響を与えていると思います。

また独自の解釈かもしれませんが、先程紹介した『途上国の人々との話し方 国際協力メタファシリテーションの手法』も、一方的に教えるのではなく人々に気付かせることに重点を置いていることから、フレイレの「対話」や「意識化」の影響を受けているのかもしれません。

むしろフレイレが教室で教師としてやっていたことを、メタファシリテーションでは村のミーティングでファシリテーターとしてやっているようにも思えます。それらの根幹とする部分が似ているということを示しているのかもしれません。

また余談ですが、私も1人の教師としてフレイレのような教育者でありたいと願っております。

    

⑧『国際教育開発論 理論と実践』

編:黒田 一雄, 横関 祐見子

大学院入試の準備において最も参考になったのがこちらの書籍です。

文字通り発展途上国における教育開発の歴史や理論、今日の課題から実践方法まで幅広く紹介されており、「勉強」に最適の1冊だと思います。

ざっくりと途上国の教育に関しての知識が得たいのであればお勧めできますが、仮に読み手が途上国にこれまで行ったことがないのであればここに書かれていることは想像しづらいと思います。(広く浅く描かれているので。)

したがってこの本で興味を持った分野について、他の書籍で理解を深めてみるのがいいかと思われます。

その他個人的にお勧めする2冊

途上国や国際開発といったテーマからは離れるものの、私のものの考え方に関して大きく影響を受けた2冊をここに紹介します。この2冊はKindleで読むことができるのを確認済みなので、まだ読んだことのない方は是非お試しください。

協力隊の活動のみならず、日常生活の中でもたいへん役立つ考え方が身に付けられるはずです。

  

⑨『問題解決 あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術』

著:高田 貴久, 岩澤 智之

この本は私が学部時代に読んだ本の中でも指折りの良書であると思っております。

ある問題に対して、どのように方策を立て対処していくか、その方法論について書かれた1冊です。もっと早くこの本に出会っていれば、と思うほど充実した内容でした。

もしかすると「仕事のデキる人」からすると当たり前のことが書かれているだけなのかもしれませんが、こういったやり方を問題解決の1つの基本の型として覚えておくといいのかもしれません。

トヨタや三菱商事をはじめ、多くの日本の大手企業が参考としている本書ですが、ビジネスパーソン以外の方にも自信をもって勧めることのできる内容となっております。

  

⑩『Switch: How to Change Things When Change Is Hard』

(邦題:スイッチ! 「変われない」を変える方法)

著:チップ ハース, ダン ハース

世界的にも有名なハース兄弟の著書で、読んでいてモチベーションが上がるような1冊です。

やらなくてはならないことがあるのに、なかなかやる気スイッチが入らない、やり始めてもなかなかうまくいかない、そういった経験を誰しも一度は経験するのではないでしょうか。

本書ではそんな状況に陥った際の手立てについて、スタンフォード大学教授で組織行動論を専門としているハース・チップ氏が様々な角度から具体的な対処方法を提案します。

本書では人間を本能と理性に分け、また「本能=象」「理性=象使い」と例え、いかに目的地に上手く辿り着くかを専門用語抜きに説明しています。たとえ話がうまいのでスッと頭に入ってくる感覚がなんとも心地よいです。

自身のやる気スイッチがどこにあるのか見失っている方は特に必読です。

いかがでしたでしょうか?

気になるものはありましたでしょうか?

最近では電子書籍の登場によりマラウイの僻地にいても読書ができるようになりました。特に協力隊の皆さまにお勧めできるものばかりなので、面白そうなものがあれば是非お試しください。

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