アフリカと中国 ~中国に対するマラウイ人の認識に関する考察~

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青年海外協力隊の宮崎充正です。

先日、同期隊員がこんなものを作ったとSNSに写真をあげていました。

Ndine Japanese. (現地語でI am Japanese と書いている)

「私は日本人です。」

どうしてこのようなTシャツを自作したかと言うと、マラウイ(もしくはアフリカ諸国)では『東洋人=中国人』という認識があり、初対面で日本人と思われる可能性はほぼ極めて低いためです。

また場合によっては中国人と思われていることにより悪質な嫌がらせを受けることもあり、他のマラウイの協力隊員から聞いたものでは…

  • 道端で知らない人に「チャンチュー or チャイナ!」と呼ばれてからかわれる。時に中国語の真似事のような言葉を言われながら付きまとわれる

上記のような言動に加え、

  • 石を投げつけられる
  • 唾を吐きかけられる
  • バイクを運転していると急に道に飛び出してくるフリをされる etc.

といった経験をしたことがあるそうです。このようなことがあると、先程のTシャツのような能動的な主張もしたくもなります。

同期隊員はわざわざ手縫いで作っていましたが、I am Japaneseと書いたTシャツが商品としてあれば、ジョークグッズとしてそれなりの需要も見込めるのでは?と感じたほどでした。そこでネットで検索してみると、次のような商品が既に存在していることが分かりました。

 

これを見る限り韓国人、台湾人も中国人と間違われることがあるようです。

加えてこれらが商品としてあるということは、中国人と思われることで不快な思いをしていたり、不遇な目にあったりしているのでしょう。

近年アフリカ進出の動きがますます大きくなってきた中国、はたしてマラウイ人の彼らに対する認識・感情はどうなっているのでしょうか。そして、どうして上記のような悪質な行動まで起こしてしまうのか、調べられる範囲で情報収集し考察してみようと思います。

個人的な体験・見解

幸いにも私自身何かひどく嫌な目にあったことはありませんが、マラウイに暮らしていて体感できることは『良くも悪くも中国のマラウイにおけるプレゼンスは日本をはるかに上回っている』ということです。

「ニーハオ」と声をかけられ、「日本人だよ」と返したとしても…

  • そもそもJapanもしくはJapaneseという単語を知らない
  • 日本は中国の一部だと思われている
  • 日本人も中国語をしゃべっていると思われている

といった反応が見られたこともこれまでに何度かありました。

おそらくマラウイでは大抵の国民が、子どもであろうと遠く離れた中国という国の存在を知っています。

一方で道を行く自動車のほとんどがTOYOTA , NISSANのような日本車であるにもかかわらず、Japanという言葉すら知らないというのが現状です。(マラウイへの支援は日本の方が中国よりも歴史が長いので余計に悲しい)

この差は中国製品がマラウイ人の生活に深く入り込んでいることから生まれていると思います。

生活必需品にしても数多くの物品がMade in Chinaであり、マラウイで暮らしているとMade in Japanの商品など車以外にはないと言っても過言ではありません。(SonyやPanasonicといった電化製品はあるが、製造元の多くがMade in Chinaとなっているため、現地から見ると中国の会社に見えてしまうかも)

そして個人的には中国の映画の影響も大きいと思っています。本来は望ましいことではないのですが、アフリカの多くの国では安価な中国映画のコピー商品が都市部・農村部を問わず流通しています。

マラウイではそれを映画館ではないのですが、シアターと呼ばれる大きめのテレビが設置された有料制の映画鑑賞スペースで子どものころから見て育ちます。そのせいか中国語のマネ(例:チャンチュンチョン!ションシャンシュン!といったもの)を言いながら子どもがからかってきたり、カンフー映画の影響か武道のポーズをとってきたりすることがあります。

こういったローカルの映画館が都市部でなく地方であっても村に1つは存在するので、コピー商品の映画によるインパクトはかなり大きいものであると思っています。

あるいは、テレビで知ったという可能性も考えられます。テレビのある家庭ではチャイニーズチャンネルが視聴可能です。そこで字幕付きの香港映画でも見て、中国語の発音でも知ることになるのでしょうか。

いずれにせよ、もはや生活・文化レベルまで中国の物品が浸透していると言ってもよいでしょう。

国民感情の悪化の原因は何か

次に、マラウイ人が中国人と思わしき者に嫌がらせをする理由について考えてみようと思います。

考えるにあたり、何人かの仲のいいマラウイ人に『マラウイは中国のことをよく思っていないというのは本当なのか?』『本当ならその理由は何か?』という質問をしてみました。

結果は半々くらいで“マラウイは中国をよく思っていない”と“そんなことなくて、中国はマラウイにとっていい国だと思う”という回答が得られました。

よく思ってない理由について尋ねると、口をそろえて言うのが中国人のビジネスによりマラウイ人が苦しめられている、というものでした。調査サンプルの数が豊富でないものの、他に意見がないくらいだったのでこのことが1つの理由になっていると考えてもよさそうです。

調べてみると2国間の貿易額には大きな差が見られます。

 中国→マラウイへの貿易額 303,819,000米ドル

 マラウイ→中国への貿易額  55,874,000米ドル

  (International Trading Centre, 2015)

つまりマラウイからすると中国からの輸入超過が顕著であり、中国への輸出額は輸入額の20%程度でしかありません。

またネット情報ではありますが、以下のような記述をいくつも見かけました。

  • 中国とマラウイが正式な国交を打ち立てた2007年から、マラウイに中国人ビジネスマンが増え始める。
  • 安価な中国雑貨がマラウイ全土に流通し、マラウイ資本の小売店の経営を苦しめ始める。
  • 2012年にマラウイ北部の街、カロンガで小売店を営む女性が中国ビジネスの躍進に対する抗議運動を開始する。
  • 瞬く間にマラウイ全国に運動が広まる。(←同僚の先生曰く「抗議運動が全国的に有名だったこともあり、この一件がきっかけで中国資本にマラウイ小売業者が苦しめられていることに知られるようになった。同時に中国を敵対視する人が増えたのでは?」
  • 中国資本の小売店が暴徒化したマラウイ人に襲撃される事件が発生し始める。
  • 2012年6月に、マラウイ政府が正式に海外資本のリロングウェ、ブランタイヤ等の都市圏以外での営業を禁止する。

(参考記事)

敵か味方か--アフリカと中国は真のパートナーになれるのか (ダイヤモンド・オンライン)

農村で商売する中国人業者に「ノー」、政府が撤退要求―マラウイ (Record China)

Chinese people in Malawi (Wikipedia)

Insight: In Africa’s warm heart, a cold welcome for Chinese leftright 4/4leftright

これらの情報から、中国ビジネスの拡大がマラウイにおいて大きな影響力を持っていることは明白です。

元々国内の製造業が全くと言っていいほど発達していないマラウイでは、多くの商品が近隣諸国(主に南アフリカ共和国)から輸入されていました。そこに価格競争において強みを持つ中国製の製品が流入すれば、現金収入の限られたマラウイ国民は安価な中国製品の方を買うようになります。そうすればマラウイの商人たちの生活に打撃が加わり、そこから中国への反感が生まれることは想像に易いと言えるでしょう。

また政府が禁止したにも関わらず、未だに中国人のビジネスが農村部で継続されているのであれば、中国人経営の商店の襲撃も起こりうるでしょう。幾つかの県の農村部では中国人経営の店舗が残っており、ビジネスの継続が黙認されている状況のようです。現に私の任地もそれなりの辺境地ですが、中国系商店が存在しています。

残念ながら中国資本の商店はマラウイの小売業界に打撃を与え、さらに政府が違法としたビジネスと続けていると言えそうです。そして中国のアフリカ進出により、マラウイだけでなく他の国でもいくらかの弊害が生じていることもありえるでしょう。

まとめると、参考記事にもはっきりと書かれていますがマラウイ人は中国人(特にビジネスを営む者)に対していいイメージを持っていないと考えられます。それにより東洋人への嫌がらせのような行為に及んでしまい、アフリカ人からすると中国人と区別のつかない日本人である協力隊員も被害を受け、嫌な思いをしてしまっています。悲しいながらも、これがマラウイにおける中国人(≒日本人も含めた東洋人)なのではないのでしょうか。

中国によるアフリカ支援の影響力

しかし中国がアフリカにもたらしたものは負の側面を持つものだけではありません。近年の中国によるアフリカ開発支援の規模は、日本のそれを大きく上回っています。

昨年12月に行われた「中国アフリカ協力フォーラム」では、中国がアフリカ諸国に向けての貧困対策に600億ドルを拠出すると表明しています。

「中国アフリカ協力フォーラム」が閉幕 中国の600億ドル支援策、「鍵」は実行

またマラウイ国内では国際会議場、ナショナルバンク、5つ星ホテルの建設など、文字通り国民が『見てわかる支援』(建物、道路などの“ハード面”での支援。いわゆるハコものの支援)が行われており、そのプレゼンスの拡大の一助となっております。

これに対し日本は、先日行われたTICAD VI(第6回アフリカ開発会議:Tokyo International Conference on African Development)にて、今後3年間での300億ドルの投資を宣言しました。

アフリカビジネスニュース -アフリカのビジネス・経済・日本企業進出に関する最新情報ニュースサイト-

金額が中国より下回っていることもあり、安倍首相は「量より質」の支援を強調し、人材育成(教育・医療・農業セクター等における“ソフト面”での支援)等や良質なインフラの拡張に関する計画を発表しました。

支援の金額だけが全てを決めるわけではありませんが、形のあるものを多く作る中国の支援は国民から見てもわかりやすく、反対に日本のおこなっている人材育成支援は必要不可欠なものではあるものの成果が見えづらいものです。

こういった支援内容からも、マラウイ国民が思う中国という国の影響力は日本を上回るものとなるのでしょう。

個人的な意見

中国のアフリカへの関わり方については賛否両論あることかと思います。

マラウイ政府が禁止したことをしているという点で、中国人経営の商店が目の敵にされ、中国をいう国自体を敵視しまいたくなる気持ちもわかります。

しかし中国という国家がマラウイに対して行う行為によって、この国は多大な利益を得てもいます。よって一部の中国人商人への恨みから中国全体を嫌うことは、これまで、そして今後の中国からの支援を軽視し、恩をあだで返しているようにすら思えてしまいます。

したがって、決められたルールの中で経済活動を堂々と行うことが中国人ビジネスマンには求められるし、マラウイはマラウイで自分たちが受けている恩恵を自覚し、その担い手である者たちに感謝の念を少しでも抱くべきでしょう。

でないと2国間の本当の意味での良好な関係は築くことはできません。また開発支援に携わる中国人技術者が東洋人のような容姿をしているというだけで不適切な対応をされるのであれば、業務へのモチベーションも損なわれ開発支援も遅れる可能性もあります。

そして多国籍の支援を受けるマラウイとしては、自分たちが中国だけでなく日本からも支援を受けているということを知っていてもらいたいと思います。それだけで私たちのように草の根レベルで活動する者は心が報われるように思う瞬間もありますし、任国のことを更に好きになれる気がします。なにより現地の人からの扱いで嫌な思いもせずに済みます。

つまりお互い気持ちよくいられるということに繋がります。

結論として、日本のこと、開発支援のことをもっと多くのマラウイ人に知ってもらえる方策を講じる必要があると感じています。冒頭で提示したI am Japaneseティ―シャツはその一例と言えます。

個人的に一番効果があると思っているのは、前半で述べたローカルの小規模映画館を利用することです。

できればの話ですが、コピー許可がなされていて、マラウイ人ウケを考慮したややコメディ調の日本&JICAプロモーション映像でも作り、都市部・農村部を問わず無料で配布します。マラウイでコピーが流通・蔓延するということを逆手に取った不特定多数への広告効果を活用した手法です。見るのは子どもが多いと思うので、現地語の吹き替えか字幕のあるものにすると尚よいかと思われます。堅苦しい文化紹介のようなものではなく、子どもでも見て楽しめるものであれば、マラウイ国内の多くの人々に伝達させられるのではないのかと思いました。(著作権フリーでそういった動画があればいいのに)

また、私が住むような農村では大きなプロモーションがなくとも、人づてに噂が村に広く浸透することを利用し、情報を拡散させることも可能です。村の知り合いに日本の話題や、マラウイが受けている国際支援に関連する内容の話をするだけでもある程度の効果が見込めるとも思いました。

この記事のまとめ!

・マラウイ人は中国のことを子どもでも知っている

 →中国による国際支援の規模の大きさだけでなく、マラウイ国民の日用品、映画などの娯楽にまで入り込むMade in Chinaの影響か

・マラウイ人は東洋人に向けた嫌がらせをすることがある

 →マラウイの中国に対する国民感情は良いものではないため

  →中国ビジネスに打撃を受けた国民がいることが一つの理由となっているか

・開発援助についてマラウイ国民が理解を深めれば、援助国・マラウイ両者の間の国民感情が良好なものになるだろう

 →プロモーション活動により状況は変わると思われ、個人的には中国のカンフー映画を広める担い手となったであろう「ローカル映画館」を利用するのが効果的だろうと考えている

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