今後の方針 

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前回の記事では赴任した学校やマラウイの教育体制に関して、だんだんと見えてきた8つ課題を教育のプレイヤ―側・マネジメント側のいずれかに分類し説明しました。

【プレイヤー側の課題】教育現場内の3つの問題点

   ➀時間を守らない

   ②生徒に容赦のない時間割

   ③不十分な教材・教具

【マネジメント側の課題】教育を外部から整える側の5つの問題点

   ④各種統計データが明らかに正確でない

   ⑤学校施設・教員数の不足

   ⑥教科書の質

   ⑦膨大な量のシラバス

   ⑧政府から各学校への物資割り当ての不適切さ

           (詳しくはこちら→学校勤務開始から1ヶ月 見えてきた8つの課題

これらを踏まえ、今回の記事では「今後どうするか」という部分について考えてみようと思います。

優先順位と活動の範囲

ざっと並べただけでも課題は山積みであるように思えてしまいます。

そしてこんな時は優先順位や関わる範囲を明確にし、自分の力を分散させすぎないようにすることが1つの方法としてあるように思います。

例えばですが、教科書やシラバスがどうとか、学校が足りないとか、マネジメント側に対して長々と述べてきましたが、マラウイにおいて学校勤務1ヶ月の新人外人教師である私がそういった内容から手を付けるのは適切ではありません。

まだまだわからないことの方が多いですし、自分のこと、赴任校のことだけで今は手一杯です。また当たり前のことではありますが、私は一教師として何十人の生徒たちの時間をもらって授業をしています。

授業者としての責務を果たすためにも、生徒に何も学ばずに私の教室をあとにしてもらうわけにはいきません。

よって

  ・第一に   自分の受け持つ授業のこと

  ・第二に   勤務する学校のこと

  ・第三に   マラウイの教育システムのこと

という優先順位のもと、今後の活動を進めていきたいと思います。

自分の受け持つ授業に対して

受け持つ授業に関して、

  教科書・シラバスの内容があまりにも多いこと

  すでに予定より遅れをとっていること  

  生徒が教科書を持っていないこと

はこれまでにも述べてきました。

これらを踏まえて、 今後私の授業が生徒にとって

  『要点をまとめた授業』

  『見て理解できる授業』

となることを目指していきたいと思います。

要点をまとめた授業

要点をまとめた授業とは、端的に言うと教科書の内容を全てはやらないでおこうというものです。重要でないと思った部分はさらっと流して、重点分野に時間をつぎ込みます。

そして何を省くかを決める際に使うのがこちら。

マラウイ理数科隊員の先輩方が残した国家試験の過去問集です。

マラウイの中高等学校では、最終学年の卒業時に国家試験を受け、そのスコアにより卒業認定、または大学入学の可否が決まります。

ということもあり、国家試験というものはマラウイの生徒にとって学校生活を締めくくる一大イベントであり、その勉強のお共にと協力隊で作ったのがこの問題集です。

この本のいいところは年度順に問題が並んでいるのではなく、分野ごとに問題が集められているところです。

例えば私が今教えている有機化学のページには過去10年分の有機化学の問題が集約されています。

これらを実際に解き、傾向を見極めることで、どの単元のどういった内容がこの国の理科教育において重要視されているか、という手がかりを得ることができます。

授業準備だけでも今はかなりの時間がかかっていますが、これもこなしつつ授業内容を考えていきたいと思います。

見て理解できる授業

見て理解できる授業とは2つの意味を持っています。

1つは「授業後に自分のノートを見て理解ができる授業」、もう1つは「板書以外を見て理解できる授業」です。

・授業後にノートを見て理解ができる授業

このブログで何度も言うように、基本的に生徒たちは教科書を持っていません。教科書を持たない彼らの学校以外での勉強の拠り所は授業中に取ったノートのみです。

したがって、授業後にノートにわかりやすく学習内容が書けているということ、それを見返して理解を深められるということが、日本の生徒以上に重要なポイントとなってくるように思っています。

幸いにもと言うべきか、生徒らが教科書を持っていないという情報はマラウイに来る前から知っていました。そのため、ノートを綺麗にまとめられる授業を行うことを派遣前訓練の授業練習の際にかなり意識して練習してきたつもりです。

なんとかその練習の成果を現場で発揮できたらと思います。

・板書以外を見てわかる授業

当然のことながら教室にはプロジェクターやスクリーンのようなものはありません。よってパワーポイントのスライドを用いた授業や映像授業を行うことはできません。メインはやはり板書ということになりますが、理科教員の私には実験という手段もあります。

私の勤務する学校は理科室がかなり充実している方だと思うので、これからも積極的に現象を実際に見せて授業を進めたいと思います。

また理科実験以外にも、視覚教材を作って持っていくという手段もあります。

例えば今教えている有機化学で言うと上の写真のようなものです。

子ども騙しのように思う方もいるかもしれませんが、先日行った期末テストの採点を踏まえて、こういった工夫も必要だなと感じてました。

マラウイの生徒は文字を覚えることが得意です。

先日紹介しましたが、あれだけ文字だけ多い教科書を使っていたら暗記が得意になることも納得できます。

それにより「○○とは何か?」という問い、定義をたずねた問題に対してかなりの正答率で、授業で教えた文言をそっくりそのまま答えることができます。

しかしそれは内容を覚えただけであって、理解しているわけではありません。

有機化学のテスト問題に対する解答でも1つの炭素原子Cが4つの原子価(結合の腕の本数とか習いませんでしたか?)を持つことを理解できていない生徒が数多くいました。

    (視覚的に結合の腕がどうなっているのか理解させたいところ)

               (今習っているヒドロキシ基のイメージ)

   (結合の腕を4本持つ炭素Cは4つの水素Hと結合しメタンとなる)

(このうち1つの水素がヒドロキシ基になったならメタンではなくメタノールとなる、と教えたい)

本来なら各元素の電子対や不対電子の話を出して詳しく説明するところですが、それよりも先に視覚教材を用いてイメージを掴ませることのほうが重要かなと思っています。理科の苦手な生徒は電子配置等の話題についてもなかなか理解できない可能性が高いので、まずはイメージをと考えています。

もちろん視覚教材は作るのに時間もかかりますが、必要に応じて使っていきたいと思います。

勤務する学校に対して

いきなりですがイメージしてみてください。

あなたは今、とある日経企業に務める一人の社員です。

 

 

そこに遠くアメリカからはるばる新入社員がやってきました。

 

名前をジェイソン君としましょう。

 

ジェイソン君は部長に連れられ自己紹介を英語で行い、今後2年間オフィスで共に過ごすことになりました。

 

 

どうやら彼の歳は職場で最年少のようです。

そしてどうやら社長のお気に入りであることが判明しました。

 

 

幸いにもその職場ではビジネスにおいて英語を使う機会もあり、社員全員が流暢に英語を話すとまではいきませんがジェイソン君とコミュニケーションを図ることはできるようです。

 

ジェイソン君はいたって真面目で、アメリカからわざわざ志望して日本に来るくらい仕事に燃えているようです。

 

 

そんなこんなで、ジェイソン君と日本人社員のオフィスライフがスタートしました。

 

 

 

 

  (1ヶ月後)

 

 

 

どこからともなくジェイソン君の声がする。

どうやらジェイソン君が部長に何かを抗議しているようだ。

 

 

ジェイソン

「Why Japanese People!?? なぜ日本の職場は休憩が昼休みの1時間しかなくて、その割に残業がこんなにも多いのデスカ!?? Why!??? 部長!

 

今後は時間を守って、残業は禁止にしましょう!!!

 

始業と終業の時間が決まってるのに無視して仕事するなんてシンジラレナイ。効率悪すぎマスネ!!!

 

 

 

そして休憩時間として、10時と昼の3時にティータイムを挟みましょう!

 

そうすれば社員のモチベーションも上がって効率も上がるはずデス。

 

効率が上がれば仕事をする時間は減ってもパフォーマンスは伸ばせると思いマス!結果的に残業も減らせることでしょう!!

 

どうですか!! ブチョー!?」

 

 

 

部長

「そ、そうだなあ…!(こいつはアメリカから来た社長のお気に入りだからなあ。どう扱えばいいものか。) 」

 

 

社員A

(残業なんてなくなるはずないだろ…)

 

社員B

(管理職が残ってるのに帰りづらい。こいつはアメリカ人だからそんなの感じないんだろうなあ。) 

 

社員C

(ティータイム休憩そんなにいるかあ??今まで休憩は一日に一回でやってこれたのに。)

 

 

 

 

 

 

前回のブログの記事に記したように、勤務する学校に関してタイトすぎる時間割や遅刻が当たり前な生徒・先生を見て日本人としては「効率が悪いんじゃないかな」と感じずにはいられません。

しかしこれを変えるとなると、自分だけではなく学校にいる生徒・先生たちを巻き込むことが必然となります。

そして今の僕がやろうとしていることはまさにジェイソン君的行動にあてはまるかもしれません。

ジェイソン君的行動とは、

 ・新しいことに挑戦しようとする。現場の体質を変えようとする。

 ・言ってることは正しいような気がする。

 ・社会的背景を無視していることがある。

 ・周囲との人間関係もそこまで親密ではないがよく意見は言う。

といった性質を伴う行動としましょう。

そして自分の立場と言えば、

[立場]

  • 理科教員として高校2年生の物理化学を受け持つ
  • この学校にとって私はいきなりやってきた新人外人教師である
  • 教師陣の中でも最年少である
  • 現地語が話せず、未だ同僚と深くはコミュニケーションができていない

と、こんなものが挙げられると思います。

できないことの言い訳を探しているのではなく、今私が主張してみてもなかなか心には響かないのではないか、というのが本音ということです。ただ単に「時間割の効率が悪い」や「時間をしっかり守ろう」と言うだけでは、コミュニティの体質は変わらないでしょう。

そこでそれを可能にするのが『豊富なコミュニケーション量により生まれる信頼関係と社会背景の十分な理解』であると私は思っています。

私がマラウイにいるのは2年間だけですが、マラウイ人の本当の姿を知り、かつ「あいつの言うことだし、聞いてやるか」と思ってもらえるようなコミュニケーションを重ねた末に現場の体質というものは徐々に変わっていくのかもしれません。

もしくは何か特別なイベントの発生(もしくは私から発生させたり)により、当人たちの内発的な考え方の変化を起こさない限り今の状態から変わることはないでしょう

よって、唐突ですが今後現地語(チェワ語)をマスターしたいと思います。

本来中高等学校では教授言語は全て英語であり、マラウイ人の先生たちもできるだけチェワ語を使わずに授業をしようと努力しているように思えます。

私も同じで、何とか拙い英語ながら理科の難しい法則を説明しようと日々苦心しております。

はっきり言うと、マラウイの理数科隊員なら英語ができれば常務には困らないと思います。(更に言うとこの2年で英語をもっと上達させたい!と思っていました。)

しかしながら私は現地語をマスターすることの利点の方が、習得に関わる時間・労力よりも上回ると判断しました。職員室での雑談を、理想としては全てチェワ語を用いて行えるようになりたいと考えています。

今後急ピッチで現地語の習得に努め、職場内でのコミュニケーションを密に取った後に今思っている職場の改善点を校長に相談できればと思っております。(マラウイはトップダウンの風潮が強いので、校長を巻き込むのがカギと思われる。)

マラウイの教育システムに対して

冒頭でも述べましたが、マラウイに来て1ヶ月の私がシラバスや教科書の内容にケチをつけることは妥当ではないように思います。

JICA関係者の方に「私はこのように思います」と主観として報告するのがまだ適当なのかなと思っています。一応JICAの教育担当の方はマラウイの教育省ともつながりがあるので、その線から意見が伝わる可能性も無きにしも非ずということです。

しかしながら問題点の⑧に記した『政府から各学校への物資割り当ての不適切さ』に関しては気になっているところもあるので、個人的に調査してみようと思います。

具体的には、まず校長にインタビュー調査をしてみてわかる範囲で教えてもらおうかなと思っています。

マラウイは各国からの多くの物資援助が送られています。しかしその物資がどのようなプロセスを経て送られてくる物資の内容が決まり、どのようにして送る対象が決まり、末端(教育セクターであるなら地方の学校)まで運ばれるのかについて興味が湧いております。

いまのところ物資援助において、教育現場レベルでは「現場のニーズと供給にギャップがあり、送ってもらっても使われずにロスとなる」という現象を何度か目にしてきました。

これを、現場に使いこなす力がないからだ!(キャパシティの増大が必要だ!)と捉えることもできるのですが、直に見て思うのは「この物資は果たして現場が望んで送られてくるものなのだろうか」というものです。

この物資の割り当ての方法(Allocation Process)についてもっと理解が深まり、かつ不効率性を発見できればロスを減らすことも可能かもしれません。

やることを確かに、かつ時に柔軟に

長々と書いてきましたが、以上が今後活動していくにあたり行っていくことです。

ただし、ここまで書いておきながらですが私の今の考えは数か月後には変わっているかもしれません。赴任から1ヵ月、まだまだわからないことだらけの中で今回の方針を決めてみました。新たな見解を得たのちに方針や考え方が変わって当然だと思います。

そして今思っている課題とその解決策だけでは私の2年間を終わらせたくないとも思っています。更に色んなことに気づき、多くを学び、もっと多くの観点から方針を決められるようになれるよう努力が必要だと感じております。

常にとどまることなくこの方針に何度も何度も修正を加え、より良い活動ができるよう心掛けたいと思います。

この記事のまとめ!

受け持つ授業に対して… 

  要点をまとめた授業・見て理解できる授業となるようにする

学校に対して…

  今は積極的には提案しない

  →コミュニケーション量の増加を図るため現地語の習得に取り組む

マラウイの教育システムに対して…

  なかなか影響は与えにくいが、

  個人的に支援物資の割り当ての方法(Allocation Process)について調べを進めたい

(すごく長くなってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございます。)

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すごく嬉しいです

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